個人に依存しない営業とは?営業組織のあるべき姿を探る
企業の要ともいえる営業部門。売上や利益を継続的に拡大させるためには、営業部門の強化は必須となります。特にデジタル化が進展し、顧客の行動が大きく変容する中では、時代に即した営業を行わなければ競合他社に遅れを取ってしまいます。今までは少人数のスーパー営業マンに依存していた営業組織も、新たな「強い営業組織」に生まれ変わらなければなりません。今回は、強い営業組織を構築するための5つのポイントを考えていきます。
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導入 ますます重要性を増す営業組織の強化
多くの企業にとって営業部門は、会社の中核を担う重要な部署といえるでしょう。営業とは、「モノやサービスの価値を変化させて(付加価値をつけて)より高く売ること」と定義できます。課題やニーズを抱えている顧客に対して自社の商品やサービスを提案することで、企業は売上・利益を作り出すのです。
グローバル化やデジタル化が進み、顧客行動が変容を見せる中、BtoCやBtoBを問わず、企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。時代に即したニーズを掘り起こすこと、新しい商品やサービスを生み出す開発力が重要なのはいうまでもないことですが、その商品を顧客にいかに届けるかといった営業力(提案力)もこれまで以上に重要性を増しています。
コロナ禍などの社会環境の変化もあり、今後さらに事業環境が複雑化する中で、国内外の激しい競争を乗り越えていくためにも、営業組織全体のレベルアップが求められます。
では、「強い営業組織」を構築するカギとは一体どのようなものなのでしょうか?
課題 スーパー営業マンに頼っているままでは組織は破綻に向かう
業績が好調な企業に対して、一人ないし少人数のスーパー営業マンがバリバリに活躍して組織を牽引しているといったイメージをお持ちの方もいるかもしれません。確かに、スター選手といえるような営業成績が飛び抜けて優秀な社員を抱えている企業は多いかもしれません。
ただし、売上の多寡によらず、その営業パーソンがスタンドプレーで動いている限り、営業チーム全体の発展は見込めないといわざるを得ません。なぜなら、個人に依存し属人化している営業組織は担当者がいなくなった時点で破綻してしまう可能性が高いからです。
同様に営業成績が良い人間を管理職に置いてしまうことも、チームとしての停滞を招く要因になります。管理職に求められる能力は営業能力とは異なるので、失敗することが多いためです。
優秀な営業パーソンの能力を組織全体に還元できていない、マネージャーとプレイヤーの適材適所ができていない、といった悩みを抱えている営業チームはたくさんあるでしょう。その問題を解決しないまま、なし崩し的に組織運営をしていくと、中長期的には営業組織ひいては企業全体の低迷につながることになります。
解決 強い営業組織を作るための5つのポイント
個人に依存しない強い営業組織を作るためには、次の5つのポイントを押さえておく必要があります。
●ポイント1:意識改革
デジタル化が普及する中、「顧客中心主義」の重要性が増しています。顧客はインターネットやスマホなどデジタルツールを駆使して、企業の選別やサービスの選択をしています。顧客は口コミや評価なども瞬時に入手できるので、取引先企業を比較検討した上で切り替えるということもざらにあります。
サービスを売る側の企業にとってはよりタフなビジネス環境になっているといえるでしょう。その中で、成功する企業の多くは顧客のニーズを先取りして読み取り、顧客のビジネス課題に対して最適なタイミングで最適な解決策を提案することで、顧客の信頼を勝ち取っているのです。そこでは、利己的で自分勝手なスタンスではなく、顧客本位の視線・姿勢が重要になります。
また意識が個人から顧客、さらには会社や社会へと外に開かれることによって、社会的意義の獲得や仕事に対するモチベーションアップなどへもつながります。営業成績の拡大だけにとらわれないよう、個人個人の意識改革を遂行しましょう。
●ポイント2:他部署との連携
以前は営業とマーケティング部門は意思の疎通が図れないといわれていました。マーケティング部門が入手・分析したデータを営業パーソンに渡しても、活用してもらえないといった事例がありました。営業としても、自分たちの経験や肌感覚で訪問先を決めて、それで一定の成果を上げていたので、データを活用する必要はないと考えていました。
しかし近年のマーケティングツールやアドテクノロジーの発展によって、ITを使ったマーケティング戦略は無視できないものとなっています。同時に、営業部門もデータの活用が営業成績に直結することに気がつき始めています。どの広告から入ってきたユーザーに対して、どの営業マンがいくらで売ったのかなど、データによってすべて把握することができるので、より確度の高い営業が可能となっています。データの活用は再現性の高い営業活動にもつながります。
●ポイント3:情報の共有
強い営業組織はチーム内で情報を共有し、今後の営業に生かしています。顧客データはもちろん、営業ノウハウや顧客からのクレーム、どのような理由で破談になったのかなど、マイナス面の情報も逐一共有することで、チームとしての成長を実現しています。営業組織全体に素早く情報共有することで失注を防ぎ、営業の効率性を飛躍的に向上させることができます。
●ポイント4:リーダーの育成
組織が継続的に発展するためには、次世代のリーダーの育成が不可欠です。営業の能力はもちろん、人間性やモチベーションの高さも求められます。企業が目指す方向性やビジョンを理解し、企業、チーム、個人が同じ方向を向いて成長していけるような人材育成を心掛けなくてはいけません。
●ポイント5:ルールの整備
強い営業組織であり続けるためにはコンプライアンスを含め、組織上のルールを徹底的に遵守させなければなりません。顧客との関係性はもちろん、社内不正をはじめ営業パーソンの超過労働問題など、ルールを守った適正な営業活動を行わなければなりません。コンプライアンス違反に対する罰則は厳しく、一度大きな問題を起こすと個人レベルでは責任を負えない範囲に影響を及ぼします。結果的に企業全体の信用失墜や業績低下を招くことにもなりかねません。
結論 データを活用した営業でLTVを伸ばす
強い営業組織を構築するためには、意識改革や会社内の他部署との連携、チーム内の情報共有、リーダーの育成やルールの整備などがポイントになります。
営業成績に直結するのが情報共有や他部署との連携などで力を発揮する「データの活用」です。デジタル時代にあっては、ITツールの利活用は必要不可欠です。営業成績や顧客情報のみならず、広告・集客データや顧客満足度などのデータを活用し、確度の高い営業を効率的に行うことが重要です。
データに即した営業は、個人の経験や能力に頼った旧来型の営業とは一線を画するものです。属人的な営業ではなく、チーム全体としてパフォーマンスを底上げできるのがデータを活用した営業なのです。
蓄積されたデータは、顧客との関係性をより深め、単発ではなくLTV (Life Time Value:顧客生涯価値)を伸ばすことにもつながります。永続的な発展を実現するためにも、顧客中心主義のもと、データを活用した営業ができるような組織の構築を目指しましょう。