そのほか
2024/09/13
與田 龍人

SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO KEYNOTE参加レポート: データクラウドの未来とAI時代の幕開け

snowflake

今回の記事はSNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYOのKEYNOTE参加レポートとなります。Snowflakeは主にデータウェアハウス製品として有名ですが近年AIソリューションにも力を入れており、業界内外で注目を集めています。

CEO スリダー氏の基調講演: AIデータクラウドが描く未来

AIデータクラウドの革新ポイント


SnowflakeのCEO、スリダー氏は基調講演で、AIとデータクラウドの融合が企業にどのような革新をもたらすかを強調しました。彼は、「AIデータクラウド」が企業におけるデータ管理の複雑性を軽減し、ビジネスの迅速化を促進すると述べ、具体的な例を交えながら次のような要点を示しました。



  • Copilot機能: データパイプラインの自動最適化をサポートし、データ処理が誰でも簡単にできるようになることで、AIがビジネスを一段と加速させると説明されました。特に、AIが従業員の「Copilot」として機能し、複雑な作業をシンプルにし、生産性を高める役割を果たすと述べています。

  • 課題に対応するSnowflake: データの複雑性、コスト制御、セキュリティ・プライバシーの管理といった課題にSnowflakeがどのように取り組んでいるかを具体的に説明。複数のワークロードを単一のプラットフォーム上で処理することで、パフォーマンスの改善や従量課金によるコスト効率を強調しました。



AIデータクラウドの利便性


Snowflakeは、あらゆる業界やペルソナに対応可能なシングルプラットフォームを提供しています。特に企業が直面する複雑なデータ運用やガバナンスの課題を解決するための「Snowflake Horizon」や、「Copilot機能」を通じたデータパイプラインの簡素化が、大きなメリットとして強調されました。



パネルディスカッション: CCCMK社と三井住友カード社による事例共有

スピードとコストの劇的な向上


KEYNOTEセッションでは、CCCMK社と三井住友カード社によるパネルディスカッションが行われ、Snowflakeを用いたデータ統合とポイントサービスの成功事例が紹介されました。



  • スピード: 両社のデータ基盤はサービスローンチの1~2か月前というタイトなスケジュールで構築され、従来の手法では実現が困難だったスピード感が得られました。これは、Snowflakeの柔軟でシンプルなデータシェアリング機能のおかげです。

  • コスト削減: 以前はデータ共有にEDI(Electronic Data Interchange)の構築が必要で、運用コストが非常に高額でした。しかし、Snowflakeを利用することで、これが従来の10分の1以下のコストに抑えられました。


セキュリティとプライバシーの保護


Snowflakeのセキュアなデータシェアリング機能により、CCCMK社がAzure、三井住友カード社がAWSという異なるクラウド環境でも、双方が必要なデータをセキュアに共有できるようになりました。個人を特定するデータは開示しないなど、厳重なセキュリティ管理が維持されています。


JERA社の事例: デジタル技術でゼロエミッションを目指す

エネルギー業界のリーダーであるJERA社は、デジタル変革の先進事例を紹介しました。JERA社は、Snowflakeを用いたデータ駆動型の運用改善を行っており、2050年のゼロエミッション目標達成に向けた取り組みが進行中です。



  • DPP (Digital Power Plant): 発電所の運用に関するデータを収集し、AIを活用してCO2削減や燃料費の削減を実現。AIによる計画外プラント停止の予測や効率化を行うアプリケーションを構築しています。

  • EKA (Enterprise Knowledge Advisor): 発電所運営のノウハウをAIが学習し、膨大なデータから最適な解決策を提案するシステム。これにより、より効率的な発電が実現されます。



Snowflakeの役割


JERA社は、水素とアンモニアを活用したクリーンエネルギー発電のため、サプライチェーン全体でのデータ連携が必要であると強調。Snowflakeのデータシェアリング機能がその基盤となっています。



最新機能の紹介: Snowflakeが描く未来のデータ管理

AIデータクラウドを実現する最新機能


EVPのChristian氏による最新機能の紹介では、Snowflakeの将来を見据えた新たな機能群が発表されました。



Document AI: PDFなどの非構造化データを自然言語で検索・変換し、構造化データとして扱える機能を紹介。これにより、企業は大量の文書データを効率的に活用できるようになります。



Icebergのサポート: 顧客の要望に応え、IcebergベースのApache Polarisカタログを導入。複数のクエリエンジンからの読み書きが可能になり、OSSでのセルフホスティングもサポートされました。


Snowpark Container Services: AWSでの一般提供が始まったDockerコンテナ対応機能。今後AzureやGoogle Cloudでも展開予定で、開発者は幅広いデータプログラムを簡単に導入・運用できるようになります。


データパイプラインとアナリティクスの進化


Snowflakeは、パイプラインの取り込みや変換、観察を一元的に管理できる機能を提供しており、特にSnowparkを使ったパフォーマンス向上やコスト削減が多くの企業に支持されています。また、地理空間データのサポートやOLTPとの同期機能も強化され、ますます多様なワークロードに対応できるようになっています。


AIとLLMの活用: 新しいエクスペリエンスの提供

LLM(Large Language Model)を活用したCortex AIの機能を紹介しました。例えば、顧客サポートでの大量の問い合わせ分類や、顧客契約書などのドキュメントに自然言語で問い合わせるといったユースケースでの実演が行われました。


Cortex Analyst: 事前に定義されたセマンティックモデルを活用し、正確な問い合わせ結果を返すAIアシスタント。



Cortex Search: カスタマーサポートや契約管理において、ドキュメントデータに自然言語でアクセスし、必要な情報をすぐに取得できる。


まとめ: Snowflakeの可能性と今後の展望

Snowflakeは、AIデータクラウドの分野で進化を続け、企業がデータを活用して新たな価値を創造するための強力な基盤を提供しています。今後も、Snowflakeは日本企業を含めた多くの顧客に対し、より効率的でコストパフォーマンスの高いデータ運用を支援していくことでしょう。


今回の「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO」では、最新技術の紹介に加えて、具体的な企業事例を通じた現実的なソリューションが示され、AIデータクラウドの未来を深く掘り下げることができたイベントとなりました。


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