データ分析
2024/06/25
與田 龍人

DataVault(データボルト)2.0について理解する

データボルト2.0は、データウェアハウジングの方法論の一つで、データの統合、管理、拡張性を強化するために設計されています。このブログでは、データボルト2.0の基本概念、利点、思想、そしてどのようなケースで使用するのかについて説明します。また、なぜ単なるディメンショナルモデルでは不十分なのかも解説します。

はじめに

データボルト2.0は、データウェアハウジングの方法論の一つで、データの統合、管理、拡張性を強化するために設計されています。このブログでは、データボルト2.0の基本概念、利点、思想、そしてどのようなケースで使用するのかについて説明します。また、なぜ単なるディメンショナルモデルでは不十分なのかも解説します。

データボルト2.0の基本概念

データボルト2.0は、以下の3つの主要な構成要素から成り立っています:



  1. ハブ (Hub)

  2. リンク (Link)

  3. サテライト (Satellite)


1. ハブ (Hub)


ハブは、ビジネスキーを中心に構成されるテーブルです。例えば、顧客IDや商品IDなどがハブに格納されます。ハブはデータの中心的な部分を形成し、変更されないビジネスキーを保持します。


2. リンク (Link)


リンクは、ハブ同士の関係性を表すテーブルです。例えば、顧客が注文を行う場合、顧客ハブと注文ハブの間にリンクが作成されます。


3. サテライト (Satellite)


サテライトは、ハブやリンクに関連する詳細な属性情報を格納するテーブルです。これには、顧客の名前や住所、注文の詳細情報などが含まれます。サテライトは、履歴情報も保持するため、データのバージョン管理が可能です。


データボルト2.0の利点

1. スケーラビリティと柔軟性


データボルトはモジュール設計のため、ビジネスやデータの変化に迅速に対応できます。新しいデータソースの追加や既存データの変更が容易で、大規模なデータ統合プロジェクトにも適しています。


2. 監査可能性と履歴管理


サテライトテーブルがデータの変更履歴を保持するため、データのバージョン管理が可能です。これにより、データの変化を追跡し、監査要件を満たすことができます。


3. データ品質と一貫性の向上


データボルト2.0は、ビジネスキーを中心にデータを構造化するため、データの一貫性と品質を保ちやすくなります。異なるソースからのデータを統合する際にも、データの整合性を維持できます。


データボルト2.0の使用ケース

データボルト2.0は、特に以下のようなケースで有効です:



  1. 大規模で複雑なデータ統合プロジェクト:異なるシステムやソースからのデータを統合する際に、データボルトのモジュール設計が役立ちます。

  2. データの履歴管理と監査が必要な場合:データの変更履歴を保持し、監査要件を満たす必要がある場合に適しています。

  3. データの一貫性と品質を重視する場合:ビジネスキーを中心にデータを構造化することで、一貫性と品質を保ちやすくなります。


ディメンショナルモデルとの違い

ディメンショナルモデルは、データマートやBIツールでのクエリ最適化を目的としたモデリング手法です。これに対し、データボルト2.0は、スケーラビリティ、履歴管理、データ統合の柔軟性を重視しています。ディメンショナルモデルでは、データの変化に伴うテーブルの変更が大きな労力を伴うことがありますが、データボルトでは、モジュール設計により柔軟に対応できます。

データボルト2.0のディレクトリ構造

以下は、データボルト2.0の実装に役立つディレクトリ構造です。各ディレクトリとファイルの役割をコメント付きで説明します。



/data_vault
/hub # ビジネスキーを中心に構成されるハブテーブルのスクリプト
hub_customer.sql # 顧客IDを格納するハブテーブルの定義
hub_product.sql # 商品IDを格納するハブテーブルの定義
/link # ハブ間の関係性を表すリンクテーブルのスクリプト
link_customer_order.sql # 顧客と注文の関係を表すリンクテーブルの定義
/satellite # 詳細な属性情報を格納するサテライトテーブルのスクリプト
sat_customer_details.sql # 顧客の詳細情報を格納するサテライトテーブルの定義
sat_order_details.sql # 注文の詳細情報を格納するサテライトテーブルの定義
/scripts # データをロードするためのスクリプト
load_hub_customer.sql # hub_customerテーブルにデータをロードするスクリプト
load_link_customer_order.sql # link_customer_orderテーブルにデータをロードするスクリプト
load_sat_customer_details.sql # sat_customer_detailsテーブルにデータをロードするスクリプト

DBT Vaultについて

DBT Vaultは、dbt(Data Build Tool)を使用してデータボルト2.0モデルを簡単に構築、管理するためのフレームワークです。DBT Vaultは、データボルトの設計原則に基づいており、データのETL(Extract, Transform, Load)プロセスを効率化し、再現性のあるデータモデルを構築します。


DBT Vaultの主な特徴



  1. テンプレート化されたモデル:DBT Vaultは、ハブ、リンク、サテライトなどのデータボルトモデルをテンプレート化して提供し、迅速にデータボルト2.0の実装を開始できます。

  2. 自動化されたデータパイプライン:DBTの強力なトランスフォーメーション機能を活用し、データボルトのデータパイプラインを自動化します。

  3. 再現性とスケーラビリティ:DBT Vaultは、再現性のあるデータモデルを提供し、スケーラブルなデータパイプラインの構築をサポートします。


DBT Vaultのリソースとリンク


DBT Vaultを始めるための公式リソースやドキュメントは以下の通りです:



  • DBT Vault GitHubリポジトリ: DBT Vaultのソースコードやドキュメントが公開されています。

  • DBT Vault ドキュメント: DBT Vaultの公式ドキュメントです。インストール方法や使い方、ベストプラクティスなどが詳しく解説されています。


まとめ

データボルト2.0は、データの統合と管理を効果的に行うための強力な方法論です。本記事では、データボルト2.0の基本概念、利点、思想、使用ケース、ディメンショナルモデルとの違い、そしてディレクトリ構造について説明しました。皆さんもぜひ活用してみてください。

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