データ分析
2026/03/31
山岡 京太郎

施策データはあるのに評価できない?EC担当者が押さえるべき「マーケ施策の正しい見方」

1. はじめに

「この施策、結局やってよかったのか?」


ECの現場で、何度も聞いてきた言葉です。


購入特典を付けたら売上は伸びた。


送料無料にしたら注文数も増えた。


新商品もそれなりに売れている。


ただ、その一方でこういう違和感が残る。



  • 利益はあまり増えていない気がする

  • 他の商品が売れなくなっている気がする

  • 施策を止める判断ができない


データはあるのに、判断に使えていない。


これは珍しい話ではありません。


多くの場合、原因はシンプルで「評価の仕方」が曖昧なまま進めてしまっていることにあります。


この記事では、実務で実際にやっている評価の進め方を、具体的なデータの作り方まで含めて整理します。



2. 問題の本質

現場でよくあるのは、「売上が伸びたかどうか」だけで判断してしまうことです。


ただ、ECの施策はそんなに単純ではありません。



  • 売上が伸びても、利益が削られている

  • ある商品が売れても、他の商品が落ちている

  • そもそも施策の影響なのか分からない


つまり見ないといけないのは、



  • *「どれだけ上乗せされたのか(純増)」と「その結果、利益が出ているのか」**です。


ここを分解できるかどうかで、施策の評価精度は大きく変わります。


3. 解決策(3つのポイント)

ポイント①:前年比+差分で「純増」を見る


まずベースになるのは、前年同期間との比較です。


ただし単純な前年比ではなく、「施策による増分」を切り出します。




■ 具体例:購入特典の分析


例えば、購入特典(ノベルティなど)を付けた場合。


最低限、以下のようなデータを用意します。


注文ID | 注文日 | 顧客ID | 注文金額 | 特典有無フラグ

これをもとに、次のように集計します。


▼今年(特典あり期間)
・特典対象注文の売上合計

▼前年同期間
・同条件の売上合計

そして差分を取ります。


売上増分 = 今年(特典あり) − 前年同期間

ここまではよくやると思います。


実務ではここからもう一段踏み込みます。


▼追加で見る指標

・売上増分 × 粗利率 = 粗利増分
・特典の原価合計

例えば、



  • 売上増分:+500万円

  • 粗利率:40% → 粗利200万円

  • 特典原価:150万円


この場合、差し引き50万円の利益が残ります。




■ 意思決定の目安



  • 粗利がしっかり残る → 継続、場合によっては拡大

  • トントン → 特典内容や対象条件を見直す

  • マイナス → すぐ止めるのではなく、対象顧客を絞って再検証


※新規顧客獲得目的なら、LTVで回収できる可能性もあるため単純に切らないのが実務的です




ポイント②:他商品との“食い合い”を確認する


売上が増えていても、それが他商品からの流入なら意味がありません。




■ 具体例:新商品分析


必要なデータはシンプルです。


注文ID | 商品ID | 商品カテゴリ | 売上金額 | 注文日

これを使って、


▼今年 vs 前年

・新商品売上
・既存商品売上

を分けて集計します。


例えば、



  • 新商品:+300万円

  • 既存商品:-200万円


この場合、純増は+100万円です。


さらに実務ではここも見ます。


・新商品の粗利率
・既存商品の粗利率

もし既存商品の方が利益率が高ければ、


売上が増えていても利益は落ちている可能性があります。




■ 意思決定の目安



  • 純増+利益も増加 → 成功(拡大余地あり)

  • 売上は増だが利益減 → 価格や構成の見直し

  • カニバリ大 → 商品ポジショニングの再設計




■ 具体例:季節商品


季節商品も同じ見方です。


▼見るポイント

・季節商品の前年比
・関連商品の売上変化

さらに一歩踏み込むと、


・同時購入率(セット率)
・客単価の変化

ここを見ると、「売れているだけ」か「売上を押し上げているか」が分かります。




ポイント③:施策コストと“増分利益”をセットで見る


売上だけで判断すると、ほぼ確実にズレます。


特に送料・割引系は典型です。




■ 具体例:送料無料キャンペーン


まずデータをこう持ちます。


注文ID | 注文日 | 注文金額 | 送料有無 | 送料無料対象フラグ

次に集計。


▼今年

・送料無料対象注文の売上
・非対象注文の売上

▼前年同期間

・同じ指標

ここで差分を見ます。


施策効果(純増) =
(今年_対象 − 前年_対象)
−(今年_非対象 − 前年_非対象)

ここでやっと「送料無料による上乗せ分」が見えます。


さらに重要なのがコスト。


・追加で負担した送料
・粗利(売上増分 × 粗利率)



■ 意思決定の目安



  • 粗利 > 送料負担 → 継続可能

  • 粗利 ≒ 送料 → 閾値(送料無料ライン)見直し

  • 粗利 < 送料 → 条件再設計 or 一時停止




■ 現場でよく見る補助指標



  • 送料無料ライン直前の注文増加(例:4,800円→5,000円)

  • 客単価の変化

  • 注文数だけ増えていないか


ここを見ると、「ちゃんと設計が効いているか」が分かります。


4. 実務での注意点・失敗例

失敗例①:売上だけ見て判断する


「売上が伸びた=成功」としてしまうケース。


実際には利益が削られていることが多いです。


特に、



  • クーポン

  • 送料無料

  • 値引き


このあたりはほぼ確実に影響します。




失敗例②:比較条件が揃っていない


意外と多いのがこれです。



  • セール期間 vs 通常期間

  • 曜日構成が違う

  • 外部要因(広告投下など)が混ざっている


前年比を見るなら、条件を揃えることが前提です。




失敗例③:データの作り込みが甘い


分析の前段でつまずくパターンです。



  • 同一ユーザーが重複カウントされている

  • 施策フラグが曖昧

  • 期間の切り方が雑


正直、分析の精度はここで8割決まります。




現場でよくあるリアルな話


「ここまでちゃんとやるの大変ですよね」とよく言われます。


その通りで、最初から完璧にやる必要はありません。


実務では、



  • まずざっくり差分を見る

  • おかしな数字が出たら深掘る


この進め方が現実的です。


最初から100点を狙うより、60点で回しながら精度を上げていく方が結果的にうまくいきます。


5. まとめ

施策評価で見るべきポイントはシンプルです。



  • 前年比で増えた“純増分”を見る

  • 他施策・他商品との関係を分解する

  • 売上ではなく利益ベースで判断する


そして何より重要なのは、


「どう評価するか」を先に決めてからデータを見ることです。


ただ実際には、



  • どの粒度でデータを持つべきか

  • どこまで分解すればよいか

  • どの指標をKPIにすべきか


といった設計でつまずくケースが多く見られます。


当社では、EC事業における施策評価の設計からデータ整備、示唆出しまでを一貫して支援しています。


「この施策、本当に利益に貢献しているのか?」を明確にしたい方は、ぜひ一度弊社までご相談ください。


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