dbt Labs: Japanローンチイベントカスタマーセッション参加レポート

先日開催されたdbt Labs Japanローンチイベントの内容を、技術ブログ形式でまとめました。アメリカやオーストラリアから多数のdbtメンバーが来日し、dbtの最新機能や今後の方向性について熱いディスカッションが行われました。本記事では、そのイベントで披露された内容・デモを中心にご紹介します。
はじめに
先日開催されたdbt Labs Japanローンチイベントの内容を、技術ブログ形式でまとめました。アメリカやオーストラリアから多数のdbtメンバーが来日し、dbtの最新機能や今後の方向性について熱いディスカッションが行われました。本記事では、そのイベントで披露された内容・デモを中心にご紹介します。
1. dbt Labs Japanの始動
グローバル規模での成長と日本市場への本格参入
- オープンソース版 dbt(dbt Core)のユーザーは5万チーム超
- 過去1年で3万 → 5万チームへと大きく成長
- dbt Cloud(有償版)の顧客は5000社以上
- 日本国内でも既に100社以上が利用
- 今後は日本国内でのエンタープライズ向けサポートを強化し、ローカルでの技術支援やパートナー連携を拡充
dbtは「データ変換ツール」から「データコントロールプレーン」へ
- SQL変換だけにとどまらない、開発(IDE)・オーケストレーション・ドキュメンテーション・テスト・可観測性といった機能を包括
- マルチクラウド/マルチデータプラットフォーム環境で、一貫したデータ品質と信頼性を提供する
2. イベントデモで紹介されたdbtの新機能
本イベントでは多数のデモが行われ、「dbtの進化したプラットフォーム機能を一通り体験できる」内容となりました。以下、主な機能をまとめます。
2.1 dbt Cloud 基本機能のデモ
「dbtを初めて触る」方向けに、クラウド版dbt Cloudの概要が紹介されました。
2.1.1 リネージ(系譜)の可視化:dbt Explorer
- テーブル/モデルごとのテスト結果や最終更新日を一覧で把握可能
- 上流・下流の依存関係をグラフィカルに表示し、「どのデータセットが不健全か」「どこがテストエラーか」を即座に発見できる
- カラム単位でも系譜が追えるため、データの追跡・ドキュメンテーションがスムーズ
2.1.2 IDEによるSQL開発
- ブラウザ上のIDEでモデル(SQLファイル)を編集し、即時プレビュー
ref()
を使ったdbt特有の記法で、モデル同士の依存関係を自動管理- 依存関係が変わればリネージ図も即時更新され、テスト・デプロイの順序を自動で制御
2.2 dbt Copilot:AIを活用した開発支援
- 「SQLを書かなくても高速にモデルを作りたい」というニーズに応えるのが、dbt Copilotです。
- モデル生成例:
- 「
fact_orders
とdim_customers
をcustomer_key
でJOINし、特定のカラムを取得したい」と自然言語で入力 - CopilotがSQLコードを自動生成 → プレビュー実行
- 「
- ドキュメントやテストの自動生成も可能
- 「カラムの説明文」「主キー/外部キーなどのテスト定義」をAIが適切に提案
日本語入力にも対応しており、「日本語でJOIN条件や欲しい列を指定 → dbt CopilotがSQLを生成」することができる点も大きな特徴です。
2.3 Semantic Layer:メトリクスを一元管理するセマンティックレイヤー
- 「どのBIツールで見ても同じ指標を得られる」世界を実現するための仕組みが、dbt Semantic Layerです。
- 同じ売上や利益などの定義をdbt上で集約管理
- Excel, Tableau, Power BI, あるいは自作アプリ(チャットボット等)から問い合わせても、同じ計算ロジックを参照
- これにより「チームAとチームBで指標定義がズレている」問題を解消
- チャットインターフェースからもクエリ可能
- 「総利益はいくら?国ごとに並べ替えて」→ カナダ、エジプト、イラン… といった結果がどのツールからでも一致
さらに、dbtのリネージ機能と組み合わせることで、上流から下流(BIツール)までエンドツーエンドの可視化が可能になります。
2.4 自動エクスポージャー:Tableau/Power BIダッシュボードとの連携
「自動エクスポージャー」機能を使えば、dbt CloudがTableauやPower BIのダッシュボードを自動検知し、リネージ上に組み込むことができます。
- Tableau上で使われているダッシュボードをdbt側のリネージ図で把握
- 例: 「
fact_orders
とdim_suppliers
を使っている『Supplier 360』ダッシュボード」
- 例: 「
- ダッシュボードの最新更新日やテスト結果を可視化し、問題があればすぐエンドユーザーに通知
- ダッシュボード利用者も、画面内に「dbtが管理するデータがいつ更新されたか」「テスト結果はどうか」を埋め込み表示し、データ品質の透明性を確保
この連携により、BIダッシュボードの利用者とデータ基盤チームが相互に状況を把握しやすくなり、トラブルシュートが効率化されます。
2.5 Visual Editor:ノーコードでdbtモデルを開発
GUIによるドラッグ&ドロップでdbtのSQLモデルを作れるのが、Visual Editorです。
- 既存のTableau PrepやPower Queryのように、画面上でJOIN, カラム名変更, フィルタ, 集計などを設定
- バックエンドでは、dbtのベストプラクティスに沿ったSQLコードが自動生成される
- Copilotとの連携により、式の作成もAIが支援
- SQLに詳しくないビジネスアナリストでも、dbt上で変換ロジックを作成 → バージョン管理 → テスト/デプロイが可能
開発者はVisual Editorが生成したコードを直接参照し、細部の修正や確認もできるため、GUIとコードのどちらも自由に行き来できる点が特徴です。
3. dbtの新たな可能性と今後の展望
今回のイベントでは、
1.dbt Copilot … AIでコード生成・テスト・ドキュメント化を支援
2.Semantic Layer … 指標定義を集中管理し、どのツールでも同じ結果を得る
3.自動エクスポージャー … Tableau/Power BIのダッシュボードと連携し、リネージや品質を可視化
4.Visual Editor … ノーコードでdbtモデルを作成可能
など、多岐にわたる新機能が紹介されました。もはやdbtは単なる「SQL変換ツール」ではなく、データのエンドツーエンド管理を行うプラットフォームとして急速に進化しています。
日本市場でも本格的にサポート体制を整備しつつあるdbt Labs。大規模組織でデータ活用が本格化している今、データ品質・ガバナンスを担保しながら開発効率も向上させるソリューションとして、dbtがさらに注目を集めそうです。
最後に
dbt Labsは今回の日本ローンチを皮切りに、パートナーエコシステムの拡充やローカルでのサポート体制を強化していくとのこと。セマンティックレイヤーやCopilotなどの機能アップデートも続々と予定され、データ基盤の新たな課題解決がますます進むことが期待されます。
データ品質・変換プロセス・分析ロジックを一本化し、全社的なデータ活用をさらに推進したい企業にとって、dbtは注目すべきプラットフォームです。ぜひ次回ミートアップや各種イベントに参加し、最新情報をキャッチアップしてみてください。