合理的な意思決定:「数理最適化」とは?
今回は、ビジネスや日常生活の様々な場面で、より良い選択をするための強力なツールである「数理最適化」について解説します。「難しそう…」と感じるかもしれませんが、実は私たちの身の回りにも深く関わっている考え方です。この記事を通じて、数理最適化を少しでも身近に感じていただければ嬉しいです。
数理最適化とは何か?
一言で言えば、数理最適化とは「与えられた制約条件の中で、最も良い結果(ベストな解)を数学的に導き出す手法」のことです 。
ここで言う「最も良い結果」とは、あらかじめ設定した「目的関数」と呼ばれるスコアを、最大化(例:利益、満足度)または最小化(例:コスト、時間)することを指します 。
身近な数理最適化の例
私たちの生活の中にある具体的な例を見てみましょう。
・最短経路問題(時間の最小化) 例えば、乗り換え案内アプリで「新宿から浜松町まで一番早く着くルート」を検索するとします 。これは、「移動にかかる時間」というスコアを最小化する問題です。
・満足度の最大化(カロリーの例) 少しユニークな例ですが、「1000円の予算内で、摂取カロリーを最大にするランチの組み合わせ」を考えるとします 。
サラダチキン(200円, 150kcal)
ラーメン(600円, 500kcal)
パスタ(400円, 350kcal)
この場合、「予算1000円」が制約条件で、「摂取カロリー」が最大化したいスコア(目的関数)になります。
ビジネスの現場では、限られた在庫や人員で工場の売上を最大化する「生産計画」や、相性を考慮した最適な「クラス分け・チーム編成」など、様々な場面で活用されています 。
数理最適化の分類
扱うデータの性質によって、数理最適化は大きく2つに分けられます 。
・連続最適化問題: 「1.98kg」や「3.5時間」のように、変数が連続的な実数値をとる問題です 。
・離散最適化問題: 「人数」や「商品の個数」のように、変数が「1個、2個」といった飛び飛びの整数値しかとれない問題です 。
線形計画問題を解いてみよう
数理最適化のイメージを掴むために、最も基本的で代表的な「線形計画問題」を例に考えてみましょう 。これは、制約条件と目的関数がすべてシンプルな一次式(直線的な関係)で表される問題です 。
以下の問題を考えてみます 。
- 制約条件(守るべきルール):
2x1 + 3x2 ≤ 84x1 + 3x2 ≤ 10x1 ≥ 0,x2 ≥ 0(x1, x2はマイナスにならない)
- 目的関数(最大化したいスコア):
z = x1 + x2の最大化
この問題をグラフで視覚的に解くと、以下のようになります。
【グラフの解説】
実行可能領域(青色の部分): 2つの制約条件の式と、x1, x2が0以上という条件をすべて満たすエリアです。このエリア内のどこかに答えがあります。
目的関数の直線(赤い点線): z = x1 + x2 の値を表す直線です。この直線を動かしていくと、zの値(スコア)が変化していきます。
最適解(赤点): 実行可能領域の中で、目的関数が最も最大化している点です。グラフから、2つの制約を表す直線の交点である (x1=1, x2=2) が最適解であり、その時の最大スコアは z=3 となることが分かります。
このように線形計画問題の解を求めていきます。

まとめ
今回は、数理最適化の基礎として、その定義や分類、そして基本的な線形計画問題の解き方を紹介しました 。世の中の多くの複雑な問題も、実はこの線形計画問題に帰着させて考えることができます 。
現在のデータ分析の現場では、機械学習による「予測」が注目されがちです。しかし、予測した結果を元に「次にどのようなアクションを取るべきか」という最適な意思決定を行うためには、数理最適化が不可欠です。これもまた、数字に基づいた重要なデータドリブンなアプローチと言えるでしょう 。
実際のビジネス現場では、より複雑な条件や膨大なデータを扱うため、専用のアルゴリズムや「ソルバー」と呼ばれる計算ソフトを活用します 。もし興味を持たれた方は、さらに深い数理最適化の世界を探求してみてください 。
