【DMBOK】データガバナンスとは?導入手順まで合わせて解説します。
データガバナンスとは、データマネジメントをコントロールすることです。つまりデータガバナンス自体が目的ではありません。データガバナンスはポリシーや決まり事を決定し、それらにしたがってデータマネジメントを計画・監視・改善していきます。
データガバナンスとは
「データガバナンス(DG)の定義は、データの資産の管理(マネジメント)に対して職務権限を通し統制(コントロール)することである。統制とは計画を立て、実行を監視し、徹底させることを指す」
DAMA International(2018) 「データマネジメント知識体系ガイド 第二版」 P96 日経BP社
これがDMBOKによる、データガバナンスの定義です。
データマネジメントはデータの価値を引き出すという実行役であり、データガバメントはそれを計画・監視・改善していく監督役です。とはいえ、組織という大きな枠組みの中なので常にすべてをデータガバナンス組織が管理はできません。そこで、ポリシーやそのプロセスを計画することによって、統制を取ります。
データガバナンスが必要になる理由
データガバナンスはなぜ導入されるべきなのでしょうか。データガバナンスを導入する価値は以下の4つがあります。
・組織の意思決定が明確になる
・規制遵守を行うため
・リスクの軽減
・プロセスの改善
これらについて詳しく見ていきましょう。
組織の意思決定が明確になる
組織は常に意思決定をしています。それはデータをどのように管理するのか、どのようにデータを活用するのかなど様々です。データガバナンスはデータに関する意思決定の方法について焦点を当てています。そのため、データガバナンスによってより明確な意思決定が可能になります。
これはデータマネジメントの促進につながり、よりデータ資産からの価値を引き出すことができます。
規制遵守を行うため
データガバナンスに取り組む一般的な最初の動機は、規制遵守を行いたいからです。特に規制が厳しい銀行業界などでは、より厳格なデータガバナンスが求められています。また、技術の進歩から私たちのデータに対する関心が集まっているのも、データガバナンスの必要性をより高めています。
リスクの軽減
近年データの需要が急速に増加しています。データが組織の活動に取り入れられ、データマネジメントの活動が盛んになると、組織はデータの品質にも敏感になり始めます。
データガバナンスはデータの品質を向上させることにも役立ちます。データガバナンスはルールを決めて運用するようなイメージです。これらが徹底され、更新されていくのであれば、データが引き起こすリスクやデータの管理に基づくデータセキュリティ、情報の取扱統制などによって、結果的にデータの品質は向上させることができます。
プロセスの改善
すでに紹介した規制遵守やリスク軽減もこのプロセスの改善に含まれるところがある。データガバナンスの定義には、データマネジメントの監視や徹底的な実行も含まれ、データガバナンスは常に改善していかなければならない。この改善の過程で、規制遵守やリスク軽減、データ品質の改善など様々な事柄が良い方向に決まっていきます。
データガバナンスの重要な二つのファクター
データガバナンスの重要なファクターは以下の2つです。
・チェンジマネジメント
・スチュワード制
この2つのファクターをどうやって導入していくかによってデータガバナンスとデータマネジメントが成功するかどうかが決まります。より詳しく説明していきます。
チェンジマネジメント
組織がデータマネジメントとデータガバナンスを成功させるには、組織の変革(チェンジマネジメント)をする必要がありますデータガバナンスは組織がそれまで取っていた習慣と違う行動を要求します。データガバナンスを組織に導入するには、組織がデータに対して関心を持っている必要があります。
この理由からチェンジマネジメントプログラムはデータガバナンスにおいて非常に重要なものです。チェンジマネジメントを行うには、組織につながる個人への変革とトップがリーダシップを発揮して変革を受け入れ、促進していくことが大切です。
チェンジマネジメントを引っ張っていくのは組織のリーダーだけではありません。もう一つの重要なファクターである、データスチュワードもデータガバナンスとデータマネジメントを成功させるには欠かせません。
スチュワード制
スチュワード制はデータを管理する人や責任を明確にすることです。データスチュワードによってデータガバナンスの諸課題の解決や促進が行われます。
データスチュワードのアクティビティには以下のことがあります。
・メタデータの管理
・ルールの標準化と文書化
・データ品質の問題管理
・データガバナンス運営アクティビティの実施
これらは、データガバナンスがもたらすものや必要な理由と一致している部分があります。データスチュワードとは、データガバナンスの実行役のような働きをします。
データスチュワードは制度化がされていなくても、機能しています。どの組織にも必ずデータスチュワード的な立場でリーダーシップを発揮している人がいます。データスチュワード制を定義するということは、彼らに明確な役割を与え、組織にも彼らが活動していることを正式に認知させることができます。その結果、組織内でデータガバナンスがより導入・運用しやすくなります。
データスチュワードは組織を代表して組織の利益のためにデータ資産を管理します。それには組織全体を見られる広い視野を持つ必要があります。組織はデータスチュワードの育成にも力を入れる必要があります。
データガバナンスによってもたらされるもの
データガバナンスを導入することによって組織にはこれらのことがもたらされます。
・データマネジメントの支援
・チェンジマネジメントの促進
・規制遵守の徹底
・データ標準の決定
データマネジメントの支援
データガバナンスの目的はデータマネジメントのコントロールです。そこには改善のプロセスも含まれており、データマネジメントの能力の向上は組織に恩恵をもたらします。データマネジメントの改善は嫌煙されがちですが、データガバナンスによってその方法が明確化すれば、組織はこれに対して積極的になります。
チェンジマネジメントの促進
チェンジマネジメントはデータガバナンス自体を受け入れてもらうための重要なプロセスですが、チェンジマネジメントはデータガバナンス以外にも良い影響を与えます。データから価値を引き出そうと考えている組織が全体的にデータに対して関心を持てば、データマネジメントやデータガバナンスにより積極的になります。
規制遵守の徹底
データガバナンスは規制を監視・評価し、適切に組織に導入します。その後組織が規制を遵守しているかの監視を行います。
データ標準の決定
データガバナンスによって標準を策定し実施します。これはプロセスを簡易化することに役立ちます。初めに意思決定を行い、同類のプロセスに標準を適用することでプロセスは簡易化されます。また、標準化によって意思決定を一貫性を持って行うこともできるようになります。
標準化は表す内容によって形式が異なりますが、データ標準が文書化されることはデータの保存と可用性を担保してくれます。
データガバナンスの導入方法
データガバナンスがどのように組織に導入されていくのかを順を追って説明していきます。
1.現状の把握
2.データガバナンス戦略の策定
3.ゴール、原則、ポリシーの策定
4.導入開始
1.現状の把握
最初に行うことは現在の組織の状況を把握することです。現状の把握は評価と調査によって行うことができます。
データマネジメント成熟度はこの評価の典型的な物の一つです。3つの評価項目があります。
変革能力
組織の行動様式の変化能力の評価です。チェンジマネジメントが行いやすいかどうかはデータガバナンスにおいて重要な評価点となります。
協調体制の準備状況
組織のデータ管理への協調能力の評価です。組織の協調能力が欠如していると、それはスチュワード制の障害になってしまいます。
事業との整合性
組織がデータ利用と事業戦略をいかにうまく組み合わせているかを評価します。
調査には、現状調査と事業整合性調査があります。
現状調査
既存のポリシーなどが、組織にどのような影響を与えているかを調査します。
事業整合度調査
データガバナンスと組織にとって利益になる点の結びつきを評価します。
これらの評価・調査によって、データガバナンスの要件リストを作成し、このリストからこの後の戦略や戦術を決定します。
2.データガバナンス戦略の策定
データガバナンス戦略では2つのことを決定します。1つ目はガバナンスの取り組み範囲、2つ目はアプローチの方法です。データガバナンス戦略には、ガバナンスの意義から導入ロードマップまで含まれている必要があります。
データガバナンスの策定の次にはそれをもう少し、具体化したオペレーティングフレームワークを定義する必要があります。オペレーティングフレームワークは実際に組織がどのように行動するのかといった、ガバナンス戦略に比べて低次元のことが書かれています。しかし、オペレーティングフレームワークの定義は難しく、それぞれの組織のニーズによって変化させていかなくてはなりません。
3.ゴール、原則、ポリシーの策定
データガバナンス戦略が策定されたあとは、組織が将来どうあるべきかを策定する必要があります。ゴール、原則、ポリシーはデータガバナンスをもとに決定され、これらは定期的に評価され改善していく必要があります。
DMBOKはポリシーの例を提供してくれます。
・データガバナンスオフィス(DGO)は組織が利用するデータを認証する。
・業務オーナーはデータガバナンス・オフィスの承認を受ける。
・業務オーナーは各業務をこなせる人材の中からデータスチュワードを指名する。データスチュワードはデータガバナンスアクティビティを調整する日常的な責任を負う。
・レポート/ダッシュボード/スコアカードを可能な限り標準化をして提供し、業務ニーズの大部分に対応できるようにする。
・臨時または規定外の報告作成のために、認定されたユーザーに認定されたデータへのアクセス権を与える。
・全ての認証されたデータはその正確性、完全性、一貫性、利用可能性、一意性、規制遵守、効率性を定期的に評価される。
DAMA International(2018) 「データマネジメント知識体系ガイド 第二版」 P112 日経BP社
4.導入開始
データガバナンスは一度に全て導入できるわけではありません。データガバナンスの導入には組織の行動の変化が伴います。だからこそチェンジマネジメントプログラムをガバナンスに導入する必要があったのです。
初期の導入段階では優先度の高いアクティビティと、それにともなう導入範囲を選択しながら段階的に導入していきます。
データガバナンスを導入するにもコストがかかります。データガバナンスは持続可能なものでなければなりません。つまり、データガバナンスは継続的に実施できるようにすることと、資金を確保することができる必要があります。