Looker Explore Assistant構築パート1: 機能の理解と環境構築編
記事は、Looker Explore Assistantに関するシリーズの一部です。ここでは、Google Cloudが提供する拡張機能を利用して、LookerのセマンティックレイヤーにAIを組み合わせ、より効率的なデータ分析を行う方法について、ステップバイステップで解説します。
導入
Looker Explore Assistantは、自然言語を使ってクエリを生成し、データの洞察を引き出すためのツールです。Lookerのセマンティックモデルを活用し、AIを用いたインタラクションを実現します。記事では、この強力なツールを使い始めるための基礎知識と、セットアップ手順をわかりやすく解説します。
Looker Explore Assistantとは何か?
Looker Explore Assistantは、Lookerプラットフォーム上で動作する拡張機能で、ユーザーが自然言語で質問することで、データベースクエリを生成し、その結果を基に分析を行うことができます。具体的には、エンタープライズデータを操作する際に、LLM(大規模言語モデル)を活用してデータ検索や分析を簡素化するためのツールです。
Explore Assistantは、LookML(Lookerのセマンティックレイヤー)を活用し、ユーザーが直接データベースにアクセスすることなく、既存のビジネスロジックを元にレポートを生成します。この仕組みにより、ユーザーはセキュリティが確保された環境で、セルフサービス型のデータ分析を簡単に実行できます。たとえば、マーケティングチームが「先月の広告キャンペーンの効果を教えて」といった質問を投げかけることで、自動的に適切なクエリが生成され、結果が返されます。
Explore Assistantの主な特徴
- 柔軟なカスタマイズ:組織の特定のユースケースに合わせてカスタマイズが可能
- クエリの履歴管理:ブラウザのローカルストレージにクエリを保存し、以前のクエリにすばやくアクセスできる
- インサイトの要約:生成された結果を要約し、簡潔なインサイトを提供
- オープンソース:任意のLLM(大規模言語モデル)を使用可能
- LookMLとの連携:既存のLookMLのビジネスロジックを活用
- セキュリティとアクセス制御:Looker管理ポータルで定義されたすべてのセキュリティ設定を適用
前提知識
Explore Assistantをセットアップする前に、以下の知識があるとスムーズに進められます:
- Looker拡張機能:Lookerで拡張機能を設定する方法に関する基本的な理解
- Terraform:インフラをコードとして管理するためのツール
- Google Cloud Shell:クラウド環境での操作をサポートするツール
- Vertex AIとBigQuery:データ分析やAIモデルの管理・運用に必要なGCPのサービス
- GCP IAM:Google Cloud Platformでのアクセス管理
セットアップ手順
Step 1: Cloud Shellのアクティブ化
まず、Google Cloud Consoleにアクセスし、画面右上の「Cloud Shell をアクティブ化」ボタンをクリックします。これにより、Cloud Shellが起動し、ターミナル環境が提供されます。このターミナルで、後述するコマンドを実行していきます。
Step 2: リポジトリのクローン
次に、Explore Assistantのソースコードをダウンロードします。以下のコマンドをCloud Shellに入力し、公式リポジトリをクローンします:
git clone https://github.com/looker-open-source/looker-explore-assistant.git
これにより、Looker Explore Assistantのリポジトリがマシンにダウンロードされ、コードがローカル環境で操作できるようになります。
次に、エディターを開き、クローンしたリポジトリ内に移動します。エディターを使って、必要な設定ファイルやコードを確認し、編集していきます。
Step 3: リポジトリ構造の確認
クローンしたリポジトリには、Explore Assistantを構築するための3つの主要なディレクトリがあります:
- explore-assistant-backend:Explore Assistantのバックエンドのセットアップを担当します。このディレクトリには、BigQueryにデプロイするためのTerraform設定が含まれています。
- explore-assistant-examples:BigQueryにアップロードする例や改良サンプルが含まれています。具体的には、
examples.json
やrefinement_examples.json
などのサンプルデータと、それをアップロードするためのPythonスクリプトが格納されています。 - explore-assistant-extension:Node.jsを使用してフロントエンドを実行するためのディレクトリです。このディレクトリには、WebpackやPackageファイル、LookMLの設定ファイルなどが含まれています。
次のステップでは、このリポジトリの構造を理解したうえで、バックエンドを構築していきます。最初にバックエンドの環境を整えることで、Explore AssistantがBigQueryと連携し、適切なデータを取得できるようにします。
まとめ
今回はLooker Explore Assistantの機能に関する紹介と、実装に伴う環境構築を行いました。次回は、具体的にバックエンドの構築手順に進んでいきます。BigQueryへの接続やTerraformを使ったインフラ設定を詳しく解説しますので、引き続きお楽しみください。
次回の記事:Looker Explore Assistant構築パート2: バックエンドのセットアップ編